2019年3月4日月曜日

生えてきている新しい手

 
降り続く雨をガラス窓から物たちが眺めている…
と言ってみたことで
遠い大海に突然のざわめき

嵐になるかもしれない

マンゴーをもうちょっと食べてみたかったが
出発の時は
急に来てしまうものだ
汽笛の音もベルも聞こえない出発

わたしは固有名詞をたっぷり舐めるように発音してみたかった
どんな固有名詞がいいだろう?
そう思い悩みながら過ごしてしまった
およそ87年

もう
すっかり若くなってしまって
馴染みの原子たち
分子たち
気づいてくれるかしら?

帯びておくべき磁気にもいろいろ種類があり
色も柄もとりどり
じぶんで似合うと思うものがほんとうによいわけではない

生えてきている新しい手の
触感に
任せようと思う

その手は目を持たないから
きっと
いちばん正確だ



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