踏み出ると
でも、出ないで
「テレビ、始まるよ、ほら、あれ、なんていったか、あれ……」
軋むというのでなく、ごとごとする重い戸を
引いているのだ、あれは……
夜の芝生のひろがりもぼくの宝
鳴きやんでいる露虫たちは蟋蟀の声をどう聴いているのかしら……
星がいっぱい見たいがそんなに広く見えない
星がいっぱいいつも見ていたい……
踏み出ないのは
ぼくでなくなる気がするから
踏み出ると
夜はぼくがぼくに会いがちになる
でも昼だって会いがちになる
大きな川から帰って
アゲハの幼虫がいっぱいいる木を見つけた
川を見ると海を思うから
海をひきずりながらアゲハの幼虫たちに会った
拾った石たちが
投げてくれ
とぼくの手に求めてくる
いまは夜
いま夜
夜の芝生のひろがりもぼくの宝
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