2019年10月15日火曜日

あらたにあるいははじめてものごとがはじまるなら




川からあふれ出た水に家を呑まれて
こんなことになるなんて
思わなかった
もうどうしたらいいか
わからない
と泣いている20代の女性をテレビが映していて
テレビが映している女性を見ていて
こんなことになるなんて
思わなかったろう
もうどうしたらいいか
わからないだろう
とこちらの思いも泳がせながら
女性の正直さに打たれていた

こんなことになるなんて
思わなかった
もうどうしたらいいか
わからない
と水没した家の前に立って泣いているすがたが
この困難な地上にある人間のあたりまえのすがたのように見え
あるべきすがたのように見え
こんなことになるなんて
思わなかった
もうどうしたらいいか
わからない
とは
なんとつよい真っ正直なことばだろう
と感じ
あらたにあるいははじめてものごとがはじまるなら
はじまり直すなら
こんなことばからでしかないと思え
どんなことになるかなんて
思いもよらない
もうどうなっていくか
わからない
というかのように
むこうからは夕がたの陽ざしが女性に差し込んで来ている




0 件のコメント:

コメントを投稿