川からあふれ出た水に家を呑まれて
こんなことになるなんて
思わなかった
もうどうしたらいいか
わからない
と泣いている20代の女性をテレビが映していて
テレビが映している女性を見ていて
こんなことになるなんて
思わなかったろう
もうどうしたらいいか
わからないだろう
とこちらの思いも泳がせながら
女性の正直さに打たれていた
こんなことになるなんて
思わなかった
もうどうしたらいいか
わからない
と水没した家の前に立って泣いているすがたが
この困難な地上にある人間のあたりまえのすがたのように見え
あるべきすがたのように見え
こんなことになるなんて
思わなかった
もうどうしたらいいか
わからない
とは
なんとつよい真っ正直なことばだろう
と感じ
あらたにあるいははじめてものごとがはじまるなら
はじまり直すなら
こんなことばからでしかないと思え
どんなことになるかなんて
思いもよらない
もうどうなっていくか
わからない
というかのように
むこうからは夕がたの陽ざしが女性に差し込んで来ている
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