2019年10月26日土曜日

未知のひとのfacebookの過去の記事の数々へとふいに

 

    万葉集巻二十五を見いでたる夢さめて胸のとどろきやまず
                                                                                佐佐木信綱



美しい写真に惹かれて
導かれて
未知のひとのfacebookの過去の記事の数々へと
ふいに入り込む

四年も前の写真と記事へ
七年も前のページへ
九年も前のずいぶん個人的な日録へ

みずから撮ったもの
よそから見つけてきたのであろう写真
とりまぜて
どれもしっとりと
静謐なこころを思わされ
というのは
こういうひとのところで
まだ
息をしていたのか
うれしい

しかし
三年前の日付を最後に
さようなら
この場でご縁のあったお友だち
みなさまがお幸せでいらっしゃいますように
と記されたまゝ
投稿は終わっている

アカウントを
閉じないで
残しておいてくれているのが
さいわい

しずかに
息を呑むような
写真の数々はfacebookに残され
型にはまらない
かたくない
けれども品のある
ことば少なな日録も残されて
さいわい

四年も前の写真と記事へ
七年も前のページへ
九年も前のずいぶん個人的な日録へ
遡りながら
おなじ頃のこちらの
生活の光景や思いの数々をも
なんども
蘇らせていける
よろこび

このひと
facebookをはじめた頃は
どんなことを記していたのだろうかと
最初期にまで
遡って行ってみると

あぁら、不思議

最初の投稿は1977年のもの
どこかの湖らしき水面の
深い色あいの
しかし
輝くようでもある波紋の
たった一枚の
写真
添え書きはひと言
「生まれ変われるかな、私?」

見る間に
もちろん1977年という日付は消え失せ
2009年に早がわり

佐佐木信綱の歌のような
夢での
べつの世界の
垣間見で
でも
あったろうか

万葉集巻二十五を見いでたる夢さめて胸のとどろきやまず





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