湿り気をもたらしてくれるので
冬の雨はわるくない
日も暮れて
暗い雨のなかを歩いていく
降る雨の粒を
街灯がひとつひとつ照らし
地面には
あかるみがポッと円盤のように落ちて
これからなにか
始まるかのようだ
明暗が
あそこにも
ここにも
小さな永遠のドラマを準備していて
草はらも
低い山も
家並みも
大きなビルも
低いビルも
冬の雨にふさわしく作られた背景のように
うつくしい控えめさで
静まっている
暗い雨のなかを歩いていく
思い出される
なんと
たくさんの事ども
起こったこと
起こらなかったこと
どの瞬間も
あゝ すばらしかったではないかと
たったひとりの聞き手
わたしに
声も立てずに
わたしはささやく
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