自動エレベーターのボタン押す手がふと迷ふ真実ゆきたき階などあ らず
富小路禎子
目覚まし時計はときどき
ふいに壊れる
鳴らない朝がなんどかあって
不思議とそういう時には自然と目は覚め
遅れないで出かけていったりしたが
眠り込んでしまっていたらどうしただろう
と考えると不安になって
そのたびにひとつずつ
買い足していったような気がする
いまも四つや五つ
目覚まし時計は枕元にあるが
寝る時間のあまりとれない夜など
ぜんぶに目覚ましをかけて
遅刻しないようにと準備しておく
そんなにいくつも目覚ましをかけて
いったいどこへと起きていこうとするのか
起きていくべきほどのところが
ほんとうにどこかにあるのか
あるとでも信じているのか
わからないまゝ
いくつも目覚ましをかけて
また
きょうも
あしたも
たぶん
あさっても
0 件のコメント:
コメントを投稿