2019年11月24日日曜日

おなじ東京都内なものだから



遠いむかしが懐かしいというのは
だれにでもあることで
ふつうな感じだが
ぼくなんかは
つい数年前のことがぜんぶ
もう
懐かしくてたまらない

引っ越したといっても
おなじ東京都内なものだから
懐かしい
懐かしい
と思いながら
ちょっと行ってこようと思えば
行けてしまう

時間がちょっとある時なんかに
ちっちゃな覚悟をして
ちょいと行ってみたりする
行ってみると
住んでいた頃とは
なんやかや
いろいろと変化してしまっていて
かつて住んであんなに馴染んだりうんざりもした場所だというのに
もうそこに居てみても
なんやかや
いろいろ変化してしまっているから
懐かしさのど真ん中に浸ってはいられない
懐かしさの淵源は遠くに行ってしまっていて
タイムマシンでもなければ
もう手が届かない

そんなこんななものだから
故郷喪失をまた新たにこころに重ねながら
よく知っている電車に乗って
いまの住まいのほうへと帰ってくる
おなじ東京都内だというのに
もう二度と戻ってこない風景がまた増えたのを痛んで
すっかり失われてしまったものを
記憶のなかでなんども蘇らせようとしながら
おなじ東京都内なものだから
ほんの数十分で
いま住んでいるところに帰り着いて
バッグを置き
部屋着に着替えたりしている




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