2020年2月13日木曜日

そこでは、すべてが



Là, tout n’est qu’ordre et beauté,
Luxe, calme et volupté.
Charles Baudelaire
L’Invitation au Voyage



ひさしぶりに
ボードレールの「旅へのいざない」を見たら
あの有名なリフレインが
痛切
だった

そこでは、すべてが秩序と美
豪奢、しずけさ、そして、快楽

若い頃は
ずいぶんとまとめ過ぎの
形式っぽさの露わすぎるリフレインだと
思ったが
ほんのちょっと長めの「旅へのいざない」の中では
長歌に対する短歌のように
この短さが効いている

そこでは、すべてが秩序と美
豪奢、しずけさ、そして、快楽

秩序も美も
豪奢もしずけさも快楽も
冠詞を取り払われて
狭い面の上に
小さな宝石のように並べられている
ボードレールが『悪の華』を捧げたテオフィル・ゴーチェの
ずいぶんと好みそうな
置きかた

ただこのように名詞を
ぽんぽんと
置いていくだけで
じゅうぶん

というのも
もう
さんざん
秩序も美も
豪奢もしずけさも快楽も
思いわずらい
あこがれ
苦悶のかぎりを尽くし
諦めてもきたから


そこでは、すべてが秩序と美
豪奢、しずけさ、そして、快楽





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