2020年3月10日火曜日

コロナコロコロコロ蜜多心経


  
わたくしは無価値人なので
わたくしの人生は無意味どころか無根拠無方向なので
ウィルスで死ぬぐらいは怖くもなんともないのであるが
死というのがけっこう面倒なのはなんどか実地で見てきているから
コロナの野郎、めんどくせえなァ
とやっぱり思うのである

いくら悟りに達しているわたくしであるにせよ
コロナの野郎、めんどくせえなァ
と思いながら飯を食ったり
外に出たり外から帰ってきたり
糞尿を盛大にしたりチョボチョボしたり
しかたなく明日も起きて人間のふりをせにゃならんから就寝するか
と身体を横たえたりする

そうして
ついさっきの就寝中のことであったが
《感染する者 重症になる者 死ぬ者 治る者 治ったようで治らぬ者…
《いろいろ出るが
《だれがどこでいつどのようになるか
《ミリ単位ですべて決定されておるから気にせんでよい
《めんどうがらなくてよい
もうすべては決まっていて人間たちの自由意志の介在する余地はな
という内容のことばをはっきり聞いたのであった
如是我聞したのであった

若い頃から運命決定論と自由意志介在論とのあいだを
思索は揺れ動いておって
運命は変えられるとか
運命などないとか
そんなほうへ大きく傾いたこともあったが
今回のことばでこのテーマはとうとう解決されたといってよい

そうして
如是我聞したのであった

人間たちよ
汝らの自由意志など存在しない
汝らがみずからの自由意志だと見なすものは単に啓示の束に過ぎぬ
どんな殲滅戦のなかでも生き残る者がおり
安全なはずの一家団欒の家のなかでも急死する者もおる
自由意志論好きの人間たちには申し訳ないほどに
自由意志なるものはこれっぽっちも存在しない
すべてあらかじめ決定されておる
ひとりの人間はどこでどんな発想に出会いどんな方法を偶然学んで
それを使って未知のどんな開拓をやらかしたりするか
そんなことのすべてが精妙にプログラミングされている
どれひとつ欠けてもその人間の成功はなされ得ないというのに
どれひとつ欠けないようになぜか奇跡的に仕組まれている
逆にどれかひとつがつねにちゃんと欠けるように仕組まれている生もある
どんな自由意志を以てしても絶対にその人物にはなし得ないように
じつに念には念を入れて仕組まれていたりもする

だから
スプーティーよ
いかなる疫病の流行るときにも思い煩ってはならない
疫病でおまえが命を落すかどうか
すべてはあらかじめ定められている
すべてを定められた種子としておまえはこの世に落ちてきたのだか
定められたままに発芽し芽を伸ばし茎を枝を伸ばし葉を繁らせ
花を付けたり実を実らせたり
あるいは花を咲かせる前に折り取られたり
せっかく実を付けても
青いうちに子どもに摘まれて捨てられたりしなけれなならない
おまえの花が咲かないうちに摘み取る者の名もすでに天に記されている
おまえの実を青いうちに摘んで弄んで捨てる者の名も記されている

スプーティーよ
だから
おまえを種子とした力と摂理がおののくほどの無為のままでいなさ
動きと未来と現在への動きをすべて捨てて
ただ今のままでいなさい
今のままでいるとは強情にその場所に居座るということではない
陽が熱すぎればいそいそと蔭へと移り
浸水が土台を崩せばしかたなく別の場所に移ったり流されたりし
人がおまえをいじめたりすればおめおめと弱々しく逃げ移りなさい
おまえが今のようなかたちとなって此処にあるのはおまえの意志ではないから
おまえをそのようにした意志にすべての未来を任せておきなさい
おまえはおまえ自身のありかたに責任を取ろうとしてはいけない
なにもかも宇宙が責任を持つのだから安心し切って無為でい続けなさい




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