2020年4月24日金曜日

ふふふ むふふふ


  
三好達治の第三詩集『閒花集』に

    虻
詩を書いて世に示す
しかも私は 世評など聞きたくない
この我儘を許し給へ 私は虻のやうに
羽音を残して飛んでいく

とある

(ふふふ
(むふふふ

独特の音とリズムのひと
三好達治は
こんなものを書くときもじつは

shiを書いて世にshiめす
shiかもわたshiは 世評など聞きたくない
この我儘を許shi給へ わたshiは虻のやうに
羽音を残shiて飛んでいく

shi音の遊楽を
忘れない

(ふふふ
(むふふふ

話はちょっとかわるが
『閒花集』は
四行詩集で
これを挟む『南窗集』『閒花集』『山果集』みな
四行詩集である

彼の好んだフランシス・ジャムの詩形に
学んだところが多い
本人が言っている

これについて阪本越郎は
達治は昭和五年ごろからフランシス・ジャムの四行詩を諸雑誌に訳出して、その骨法を会得しようとしたようである。それまで試みてきた自由詩や散文詩の後に、わざわざ四行詩という規格にはまった詩を作るには、なんらかの内的必然性があったはずである。
と書いている

日本の自由詩において
四行詩で行こうというのは
非常な慧眼であろう
とわたしは深く共感するところがある
五行
六行
七行
でもよいだろうか
とにかく
十行
程度までというのが
真に詩らしい詩に
現代日本語の詩がはじめて成りうるか
どうか
懸かっている
そんな気がする

(ふふふ
(むふふふ

そういえば
(めったに思い出さないのだが…
『フランシス・ジャム全詩集』を個人で訳出したのは
わたしの親しかった手塚伸一先生だった
三好達治だけでなく
堀口大学や安東次男や大岡信や田辺保や倉田清らの
訳業も集めた『フランシス・ジャム全集』に
加わってもいた
今では岩波文庫に
先生の訳業
ずいぶん入りましたネ

夏の休みの近づく
うだるような暑さのなか
研究室で
当時
バルザック研究に没頭していた
ランボー狂いでロートレアモン狂いのわたしの
おしゃべり相手をしてくださった
時間など
思い出される
 (めったに思い出さないのだが……

(ふふふ
(むふふふ




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