4 水都ゆららの肌は外の暗さの明るさを喜ぶ
水都ゆららは、夜というものの中へと歩み入りながら、
真っ暗なプールの中にあった水には、
そればかりではない。
離れたところには、星のような光の粒が地上に散乱している。
あれは灯火というんだ、と闇が言った。
そうだよ、灯火というんだ、と灯火から届いた光たちも告げた。
「でも、明かりと言ったり、電灯と言ったり、ランプと言ったり、
と、光たちは、さらに言った。
おしゃべりの賑やかさに、水都ゆららは光たちを楽しんだ。
じぶんの上のほうにも、光の粒が、いくらか見えた。
それらから来る光たちが、わたしたちは星、と言った。
「まあね、人間たちがそう呼んでいるだけのことだけどね」
とも、星の光たちは加えた。
へんね、と水都ゆららは思った。
光の粒でいるなんて、へんなことだわ。
声には出さなかったのに、水都ゆららの思いを読み取って、
「じゃあ、どうだったら、へんじゃなくなるんだい?」
と聞いた。
「さあ」
「さあ、…じゃ、わからないよ」
「光の粒も、そうじゃないのも、どれもへん」
「じゃあ、きみだってへんじゃないか?」
「そうね、へんね」
水都ゆららがあっさり降参したように聞こえて、
聞いていた地上の灯火たちも笑った。
水都ゆららは笑わなかった。
笑うということを、ゆららはまだ知らなかったから。
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