幼稚園に入ると
てかてかに塗られた
お道具箱という木箱があって
そこには白い太い字で
するがまさき
と書かれてあった
迷子になった時なんかに
じぶんの名前を言えるようにと
するがまさき
するがまさき
と小さい頃から
覚え込まされていたけれど
文字で見せられたのは
たぶんはじめてで
するがまさき
するがまさき
と発音しながら
まるで他人のように
まるでべつの生き物のように
なんどもなんども見つめた
そのうち逆から
きさまがるす
とも読んでみるようになって
なんだか
ずいぶんドスの効いた
怪獣もどきみたいだと思ったが
きさまがるす
きさまがるす
とくり返しているうちに
じぶんのべつの顔のように感じてきて
こいつ無視できないな
などと思って文字を見る
ガメラのライバルの
ギャオスが登場した時には
じぶんのほうが先に地上に来ていたぜ
などと思ったりした
キサマガルス
とカタカナで書いて
想像のなかでギャオスに対抗したり
三菱の自動車ギャランができた時には
キサマギャラン
なんて言い換えて
自転車を自動車っぽく乗りまわしたりした
貴様が留守
なんて
漢字で思い浮かべるようになったのは
だいぶ後になってから
小学校高学年の
受験用の漢字のドリルを
さんざんやらされるようになってから
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