中学生になってからの
最初の国語の先生は
宮田先生という眼鏡の先生で
まだ二十代だったのだろう
じゅうぶんに若くてやさしくて
授業もちゃんとやっていたが
べつにおもしろいわけでもなく
格別つまらないわけでもなく
たゞとにかく怖くはないので
居心地はわるくなかった
いま思い出すと
どんな授業だったか
まるで記憶に残っていないので
そういうのも
いいんだか悪いんだか
ちょっと考えさせられてしまう
いま思い出すと
なにかのおりに
佐藤春夫のことが話に出たら
ある会で佐藤春夫には会ったことがあります
階段を下りてこられるところに
正面から出くわしたことがありました
あゝこれが佐藤春夫なんだと思って
けっこう感動しました
などと宮田先生は言っていたが
中学一年生にとっては『田園の憂鬱』も
『都会の憂鬱』も無きにひとしく
サンマ甘いかしょっぱいか…も
なんだかなァという詩にしか見えなくて
まったくピンと来なかった
だいたい春夫という名前からして
「三波春夫でございます」という時代で
佐藤にしたって佐藤栄作や
サトウハチローのほうが有名な時代だった
いいんだか悪いんだか
ほんとうに
まるっきり覚えていないのだ
宮田先生の国語の授業の雰囲気も
なにをどんなふうに習ったかも
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