2021年1月27日水曜日

哀しむ


本を出そうとする人を哀しむ

ずいぶんたくさんの本の誕生に立会い

どれもこれも消えていったのを見てきたから

 

この人の本は残っていくナ

そうわかる人もある

 

この人の本は残らないナ

これもわかる

はっきりとわかる

 

30年も前や20年も前

ちょっとは広告もされ

賞も与えられたりし

出版記念会もきらきらしく行われて

ひょっとして

未来はこの人たちのものになるのか?

と思いかけた瞬間は

本当に

幾度もあった

 

恐ろしいと思う

どの一冊も

誰ひとりも

残っていないのだから

あんなに美辞麗句の舞ったのを見て

こんなにさっぱりと余塵さえ失せて

 

出す瞬間に本は商売となり

大衆の記憶への挑戦となる恐ろしさを

認識し足りないのを哀しむ

なに、わかる人たちしか相手にはしていないさ

という

さびしい傲岸を哀しむ





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