2021年1月8日金曜日

世田谷区があの巨大な謎の蒸発を遂げて

 

眠っているときは

夢の奔流にさいなまれている

 

目覚めているときには

からだや気分の好き勝手に

右往左往させられている

 

だいたい

寝ていても覚めていても

運命のジェットコースターの気まぐれに

振りまわされてばかり

 

こんな悪条件のなかで

わたしなるものの自律だとか

自由だとか明晰さだとか

求めようとすること自体が

意識なるものの大がかりなペテンか

そこまでいわずとも

幻影や虚妄のたぐいなのだろうと

ついに

腑に落ちた夜の踏み切り待ち

あのとき以来

わたしの人生はめでたく終わって

思いなやむということが

まったく

なくなってしまったのさ

 

どこの踏み切りだったかって?

 

東急世田谷線西太子堂駅の踏み切りで

もう少し細かく言うと

日本国東京都世田谷区の

太子堂2丁目と4丁目のあいだの踏み切り

 

あのあたりを行き来して

淡島通りから世田谷通りへと

世田谷通りから淡島通りへと

行き来することが多かった時代が

あったわけさ

 

もちろん

もう誰も知らない

誰も覚えていない

世田谷区があの巨大な謎の蒸発を遂げて

この世からなくなってしまう

ずっとずっと

前のことなのだから





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