マスクして没落のみちここに来し
富澤赤黄男は
昭和十五年以前に
もう
こう詠んでいる
あゝ あと五年もすれば
また
決定的な“敗戦”に
なだれ込む
のではないか
などと
思ってしまう
思ってしまうが
玉ねぎが白くて風邪をひいてゐる
夕焼のやうな魚をさげてくる
風よりもかなしき汝が寝息かな
ゆくすゑは遠くに夜の海鳴れり
過去(こしかた)のくらきおもひに灯をともす
貧乏にまけさうになる水をのむ
少女ゐて晩夏の花を買へといふ
など
読んで
思いをそらそうとする
が
富澤赤黄男的暗さ
だな
*富澤赤黄男句集『魚の骨』(河出書房、昭和十五年)
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