毎年のように11月から
1月2月にかけては
日本全国に出まわる商品の
来年度の制作に忙殺されることになる
いろいろやって来ている
賃仕事のうちの
ひとつ
ただでさえ
忙しいというのに
そこに入れる
365の
短歌や俳句を選ぶのに
もう
昼も夜もなくなる
一日に一冊の
古典の厚い和歌集の全ページに
目を通してしまうなどは
よくあること
肩は凝り
目をしょぼつかせながら
それでも
なんという
名作の堆積が日本語には
存在しているのか
と
嬉しい発見が続く
これらを読まずに死んでいく
あまりに多くの日本語使用者たちがいるのか
と思うと
せっかく日本語のプールの中に身を浸しているのに
なんともったいないこと
と
あわれになる
明治天皇の歌など
すでにたくさん選んできたので
この数年は
だんだん数を減らしているが
それでも
ちょく
ちょく
選んでしまう
九万以上の歌を残した
明治天皇の歌を
知らないというのはさびしく恐ろしいもので
人は平気で馬鹿にしたりもするが
まァ
九万首程度作ってみてから
馬鹿にしたら
ヨロシ
とよく思う
下手の横好き
というが
九万首を作り続ける物好きというのは
やはり
ただならぬ人
至尊調と呼ばれる
シューベルトの「グレート」のような
音の延びの心地よい
いかにも天皇っぽい歌も
もちろん
多く作ったものの
明治天皇の作歌の進歩は
だんだんと
個人的な歌へ
日常のこまかなものを歌うことへ
進んでいった点にある
作歌が天皇をふつうの個人にしていった
天皇が天皇を脱いでひとりの人になっていくさまが見える
そこのところが面白い
天皇の歌なんか…と
はじめは私も
思って読みはじめたものだったが
どうしてどうして
あれだけのこまやかな気持ちの書きとめられた
さまをいくつも見ると
そういう
偏見は自然と剥落していったものだった
2022年の読者が読むであろう
明治天皇の
なんでもない日常の歌を
いくつか
季節の流れの順に
此処に
雪ふれば駒にくらおき野に山に遊びし昔おもひいでつつ
さく花のかげにふたたび行きてみむまだ春の日はくれのこりけり
さみだれの風うちしめりさむければわたいれ衣けさも着にけり
蝙蝠のかさもたたみて夏かげの柳のもとにたちよりにけり
玉川のながれをひきしやりみづにあつさわするる九重の庭
きりはれし月夜にみればわがをかのすすきはなべて穂にいでにけり
しづかにも更けゆく夜はのかねたたきいづこともなくきこえけるか
菊のはな机のうへにさしてみむそのふに遊ぶいとまなければ
冬浅きほりのうちにもあしがものけさひとつがひ浮きそめにけり
文机にかざれる玉の光まで寒くぞ見ゆる霜さゆる夜は
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