その町には
駅ホームの小さな待合室のような
人が10人ぐらい入れるような
簡易教室があちこちにある
なにか小さなことを教えたい人が
「授業します」という札を垂らすと
誰も聞き手がいない時でも
急に教えはじめたりする
そうすると聞く人は
あとから入って来はじめる
中の椅子に座って休んでいてもいい
そうすると急に先生役が来て
ではこれこれについてお話します
などと授業を始めたりする
授業の予定など貼り出されておらず
どこでなにが聞けるか聞き逃すか
まったく見当もつかない
でも運命に従ってればいい
その町でおもしろいことは
人が誰かに興味を持ったり
好意を持ったりすると
すぐに腕や手に触れてくることだ
そうするとそこで会話が始まり
外でも立ったままで
個別指導が始まったりする
信号の脇でも歩道の中でも
どこかの喫茶店の前でも
腕や手に触れてこられて
ずっと袖を引っぱられたままでも
じゃけんにしてはいけない
触れて来た人に向かいあって
ちゃんと応対する風習があるのだ
ですから町はおだやかな感じで
どこにもいつも静かなカップルが
いっぱいできているような町です
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