すてきなことはみんないつか終わるもの
村上春樹『スプートニクの恋人』
こうして生きてるだろ?
あしたもあさっても
だいたいはこんな感じで
続いていくと思うだろ?
けれどこういうのが
ある時ぜんぶ終わるのを
ぼくはよく知っている
なんども引越しをしたので
ある日ほんとうに
ぜんぶ変わってしまうのを
体験してきたのでわかる
人が死んでその人の家を
かわりに整理したこともあって
終わるとはどういうことか
体験してきたのでわかる
悪くなかった家族なのに
ある時爆発のように壊れて
ちりぢりになって二度と
戻らなくなってしまうのも
体験してきたのでわかる
大事にしてきたものが
薄いガラス細工のように
容易に砕け散って二度と
戻らなくなってしまうのを
体験してきたのでわかる
だから大事なものは
二度と持ちたくなくなるのも
体験してきたのでわかる
みんな死んでしまえばいいのに
という綾波レイのことばが
じぶんの内奥のことばとして
ずっと共鳴し続けていくのも
体験してきたのでわかる
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