2021年6月30日水曜日

こちらを見てニタッと


 

紀尾井ホールで聴いた

寺田悦子&渡邊規久雄デュオによるピアノリサイタルでは

シューマンの『東洋の絵《6つの即興曲》』が秀逸で

シューマン好きには嬉しかった

デュオにとっては最高度の難曲のひとつ

メンデルスゾーンの『アンダンテと華麗なるアレグロ・イ短調』も

なるほど飽きる暇のない曲で

『無言歌』を掛けるたびにちょっと退屈してしまう

わたしのようなメンデルスゾーン食傷気味の者にも面白かった

あ! しかし!

交響曲『イタリア』や『スコットランド』は大好きなので

ピアノのメンデルスゾーンに飽きている

というだけのことかもしれない

 

シューマンの交響曲第1番『春』を

シューマン自身が書き直した連弾版で聴けたのは貴重だった

もっとも

叩くことでしか曲を進めていけないピアノでは

弦を擦ることで曲を進めていく場面が命の交響曲の魅力を

全面的に再現するわけにはいかず

やはり交響曲はオーケストラによらないと

と再確認させられた

とはいえ

シューマンがこれを作曲している時には

ピアノを弾きながらこのような音を作っていったのだろう

クララと連弾して確認していったこともあっただろう

そう思われて

交響曲第1番『春』の発生の瞬間を

ちょっと

垣間見させてもらうような気にもなった

 

帰ってから

家で

もちろんオーケストラによる交響曲第1番『春』を聴いてみる

もちろん彼の時代の音に近い演奏をする楽団でなければならず

そうなればロイ・グッドマン指揮の

オリジナル楽器演奏のザ・ハノーヴァー・バンドということになる

モダン楽器による楽団ではなかなか出せない微妙な音が

シューマンの交響曲には張り巡らされているが

ザ・ハノーヴァー・バンドによる演奏は

まったく!

革命的なものだよね!

これがシューマンなんだよね!

語りあった人たちも

もう

いない2021年の夏である

 

そういえば

元首相の鳩山由紀夫が聴きに来ていて

入場の時

すぐ後ろに並んでいた

けっこう背の高い人なんだな

と思ったが

赤坂のANAホテルの裏でロシアのエリツィンと遭遇し

ぶつかりそうになった時を思うと

あっちのほうがデッカかったな

と再確認

 

「あ。失礼」と言ったら

こちらを見て

ニタッと笑ったエリツィンの顔が

今も

忘れがたい




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