2021年6月23日水曜日

単なる汗と垢の臭いの濃縮凝集版



何ヶ月ぶりだろう

ひさしぶりに総武線に乗ったら

車両がガラガラで

こりゃいいや

と思って座ったら

ウッ

と臭くて

前を見たら

乞食のおじさんがくつろいでいた

 

汗を洗わずに凝集させた

ウッ

という臭いが漂い

このせいで

車両から人が退散していくので

ガラガラ

 

まあ

どうしようかな

他の車両に移ろうかな

思う

思う

ふつう

 

しかるに

我が輩はフツーではないのであるからして

ずっと座り続けることにした

 

意地

ではない

そんなところに

意地

使わない

もう

ガキではないのだ

意地っぱり

なんぞ

しないのだ

 

臭いを鼻腔の奥で簡易分析すると

しょせん

単なる汗と垢の臭いの

濃縮凝集版

わかる

サリンではない

じゃあ

わざわざ席を移動するほどのこともない

夏に

汗をたっぷりかいて寝る日が続いた後なんぞ

じぶんのタオルも

こんな臭いになることもある

学生時代に着た

夏の柔道着なんぞ

もっと臭ったことがあるし

剣道部の連中は

お面の中が臭くてしょうがない

よく言っていた

しょせん

単なる汗と垢の臭いの

濃縮凝集版

生身の人間の

どうしようもない臭いの

一種

に過ぎない

こういうのを排除し過ぎようとする精神は

人類の生存を危ぶませる

陰謀

元締め

言える

なんとか

ふだんの生活はキレイキレイに過ごしおおせたとしても

ヨイヨイになった老後は

だぁれも

汗だらけの寝間着など

毎日替えてはくれませんぞよ

月に40万50万する介護施設に入れなきゃ

それでアウト

週に二度ぐらいの

寝間着やパンツやタオル替え

シーツなんか

あんた

週に一回くらいがいいところ

最後はそうなって

自分の汗と垢の臭いの

濃縮凝集版

の中で

衰弱していくばかりなり

は~い、オジイチャン、ご飯たべましょうねエ

は~い、オバアチャン、ご飯食べましょうねエ

と言われ続ける日々の後

十分に衰え切ったところで心臓腎臓肝臓が

ようやく止まってくれる

喜びの

ハレの日の

訪れまで

単なる汗と垢の臭いの

濃縮凝集版

中で

泳ぎ続ける

老醜の

日々だけが待つ

誰の最期も

誰の最期も

 

まあ

こんな臭いとも

十数分のつきあいだと思い

こっちは

フランス語で読み直しはじめた

モーパッサンの『ベラミ』を開いて

語りのうまさを再確認しつつ

つつつつーっと

行から行へと

追い続けている

 

乞食のおじさん

けっこうご機嫌な調子で

白髪に白髭

なかなか仙人っぽくもあれば

悟った坊さんみたいでもあって

臭いは臭いが

雰囲気は悪くないのである

 

そうこうするうち

目的の新宿駅に着き

こっちはモーパッサンをしまって

ホームに下りる

単なる汗と垢の臭いの

濃縮凝集版

生身の人間の

どうしようもない臭い

とのつきあいも

はや

終わり

思えば短い

つかの間の伴走で

御座ったなァ

 

新宿ではワッと人が乗り込んで来る

それがワッと怯むさまが

ワッと楽しかったが

そんな光景を見続けていつまでも楽しむわけにもいかず

なごり惜しい光景を後にして

新宿駅2021年6月の雑踏の中へと

身を翻していく

わたくしではあった

 

気に入ったのは

さすがに乞食のおじさん

マスクなど

もちろんせずに

ウイルスなんぞ空中で瞬間に撃墜するほどの臭気だけ放って

昨今の仕組まれたコロナ騒ぎを

存在そのものが馬鹿に仕切っていたところ

三密を根本から破壊するには

単なる汗と垢の臭いの

濃縮凝集版

生身の人間の

どうしようもない臭いこそ

秘密兵器

身を以て

証明なさっておったところ

 

この次には

すでに令和の確固たる産業になっておる

スカトロAV女優たちに

お出ましいただくのが

よろしいかも

のう





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