何ヶ月ぶりだろう
ひさしぶりに総武線に乗ったら
車両がガラガラで
こりゃいいや
と思って座ったら
ウッ
と臭くて
前を見たら
乞食のおじさんがくつろいでいた
汗を洗わずに凝集させた
ウッ
という臭いが漂い
このせいで
車両から人が退散していくので
ガラガラ
まあ
どうしようかな
他の車両に移ろうかな
と
思う
わ
な
思う
よ
ね
ふつう
しかるに
我が輩はフツーではないのであるからして
ずっと座り続けることにした
意地
で
ではない
そんなところに
意地
は
使わない
もう
ガキではないのだ
意地っぱり
なんぞ
しないのだ
臭いを鼻腔の奥で簡易分析すると
しょせん
単なる汗と垢の臭いの
濃縮凝集版
と
わかる
サリンではない
じゃあ
わざわざ席を移動するほどのこともない
夏に
汗をたっぷりかいて寝る日が続いた後なんぞ
じぶんのタオルも
こんな臭いになることもある
学生時代に着た
夏の柔道着なんぞ
もっと臭ったことがあるし
剣道部の連中は
お面の中が臭くてしょうがない
と
よく言っていた
しょせん
単なる汗と垢の臭いの
濃縮凝集版
生身の人間の
どうしようもない臭いの
一種
に過ぎない
こういうのを排除し過ぎようとする精神は
人類の生存を危ぶませる
陰謀
の
元締め
と
言える
なんとか
ふだんの生活はキレイキレイに過ごしおおせたとしても
ヨイヨイになった老後は
だぁれも
汗だらけの寝間着など
毎日替えてはくれませんぞよ
月に40万50万する介護施設に入れなきゃ
それでアウト
週に二度ぐらいの
寝間着やパンツやタオル替え
シーツなんか
あんた
週に一回くらいがいいところ
最後はそうなって
自分の汗と垢の臭いの
濃縮凝集版
の中で
衰弱していくばかりなり
は~い、オジイチャン、ご飯たべましょうねエ
は~い、オバアチャン、ご飯食べましょうねエ
と言われ続ける日々の後
十分に衰え切ったところで心臓腎臓肝臓が
ようやく止まってくれる
喜びの
ハレの日の
訪れまで
単なる汗と垢の臭いの
濃縮凝集版
の
中で
泳ぎ続ける
老醜の
日々だけが待つ
誰の最期も
誰の最期も
まあ
こんな臭いとも
十数分のつきあいだと思い
こっちは
フランス語で読み直しはじめた
モーパッサンの『ベラミ』を開いて
語りのうまさを再確認しつつ
つつつつーっと
行から行へと
追い続けている
乞食のおじさん
けっこうご機嫌な調子で
白髪に白髭
なかなか仙人っぽくもあれば
悟った坊さんみたいでもあって
臭いは臭いが
雰囲気は悪くないのである
そうこうするうち
目的の新宿駅に着き
こっちはモーパッサンをしまって
ホームに下りる
単なる汗と垢の臭いの
濃縮凝集版
生身の人間の
どうしようもない臭い
とのつきあいも
はや
終わり
思えば短い
つかの間の伴走で
御座ったなァ
新宿ではワッと人が乗り込んで来る
それがワッと怯むさまが
ワッと楽しかったが
そんな光景を見続けていつまでも楽しむわけにもいかず
なごり惜しい光景を後にして
新宿駅2021年6月の雑踏の中へと
身を翻していく
わたくしではあった
気に入ったのは
さすがに乞食のおじさん
マスクなど
もちろんせずに
ウイルスなんぞ空中で瞬間に撃墜するほどの臭気だけ放って
昨今の仕組まれたコロナ騒ぎを
存在そのものが馬鹿に仕切っていたところ
三密を根本から破壊するには
単なる汗と垢の臭いの
濃縮凝集版
生身の人間の
どうしようもない臭いこそ
秘密兵器
と
身を以て
証明なさっておったところ
この次には
すでに令和の確固たる産業になっておる
スカトロAV女優たちに
お出ましいただくのが
よろしいかも
のう
0 件のコメント:
コメントを投稿