2021年7月3日土曜日

「西早稲田」製

 

 

京都の高級ホテルのあちこちで

瓶詰めのお茶をよく出された

後発酵の黒茶であったり

紅茶であったりしたが

ホテルに着いた当座

チェックインを待つ間などには

冷したこれを飲むのも

まぁ悪くはない

 

家にも送られてきたりして

瓶詰めだから心配せず

室温のままどこかに

箱から出さずに置いておいたりするのだが

この間ふと見て驚いたのは

要冷蔵だと書かれている

10度以下で保存とあって

貰ってからもうひと月経っているから

これはダメかもしれないと思いつつ

冷蔵庫に入れ直して

味見というか毒味というか

ちょっと注意しながら飲んでみたら

まぁ大丈夫そうなので

このところ一本ずつ飲んでいる

 

どうということのないお茶で

不味くはないが美味くもない

こんなものを瓶詰めにして

なにかご大層ぶってふっかけるとは

世の中もどうかしていると思う

紅茶や茶の味にはうるさいので

美味くないものはちゃんと

美味くないと言いたくなってしまう

 

ただのお茶だから

べつに瓶詰めしようが

買う馬鹿がいるというのなら

高値をふっかけようが

かまわないが

壜を開ければすぐ飲めるのは便利でも

たいして美味くもないのを

褒めろといわれてもそれはできない

 

高級ホテルのディナー前に

外の風景が見渡せるカウンターで

これが出てきて壜を見せてもらったら

なんと製造会社は東京の西早稲田で

それを見てゲンナリとなったのを覚えている

「西早稲田」製の高級瓶詰め茶と聞いて

笑ってしまわない東京人がいるだろうか?

あのあたりはよく知っているから

早稲田の学生に混ざって飲み食いしたり

古本を探したりするにはいいだろうと思うが

瓶詰めの高級茶にあの住所を印刷するなよ

とどうしても思ってしまう

この末世の末世の社会にあっては

必死に流行させようとする高級品なるものには

お笑いがピッタリ貼りついている





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