2021年9月15日水曜日

スズムシの世話をはじめてみると

  

 

スズムシの世話をはじめてみると

スズムシの気持ちを

それなり

やっぱり考えたりする

 

エサのナスを楊枝に刺して

土に立てるにも

キュウリを立てる場合にも

どこに立てようか

けっこう考えたりする

煮干しも楊枝に刺して立てるが

その位置も気にする

霧吹きで水分をふっかけるにも

どのぐらいにしておこうか

ようすを見ながらやる

 

かれらときたら

じぶんの脚をなめたり

ほかの脚でこすったり

触角を口で磨いたり

羽に付いたゴミを落そうとしたり

けっこう

おめかしに忙しいが

こういうのを見ていると

気持ちだけでなく

それなりの考えや

美意識まで持っているんだろう

と感じてくる

 

スズムシの顔は

コオロギとちがって小さいので

馴染んでくると

顔の小さなほかの虫も

なんだか

前よりずいぶん近い存在に

思えてくる

 

とにかく

スズムシは虫なのだから

これに馴染んで

気持ちを汲んでやろうとしたりすると

蚊だって

蠅だって

カガンボだって

カゲロウだって

ゴキブリだって

もうみんな

お隣さんに思い直されてくる

 

汲んでやるべき気持ちが

スズムシにあるのなら

ほかの虫たちにも

同じように気持ちがあるはずで

そんなことを

ながいあいだ勝手に無視して

人間

だとか

大人

だとか

やってきたつもりの人生には

たぶん

やっぱり

たいした意義はなかったかもな

どこか

ちがっていたよな

思ってしまう





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