ついさっき
なにか
書き留めたおりに
壮絶な
と言っていいほどの物狂おしい懐かしさで
埴谷雄高の『死霊』の
あのページこのページが
思い出された
ただ
それだけのことだが・・・
あゝ
あれは
いつの時だったか
ヘリオトロープの咲く
室内庭園で
人を待ちながら
『死霊』を読んでいたことがあって
そこの
生ぬるいような空気と
ちょっと汗ばむような暑さとが
いっぺんに
いっしょに思われた
まるで
北原白秋の「室内庭園」のような・・・
あれは
どこだったか
あゝ
あれは
いつの時だったか
暮れなやみ、暮れなやみ、噴水の水はしたたる……
そのもとにあまりりす赤くほのめき、
やはらかにちらぼへるヘリオトロオブ。
わかき日のなまめきのそのほめき静こころなし。
尽きせざる噴水よ………
黄なる実の熟るる草、奇異の香木、
その空にはるかなる硝子の青み、
外光のそのなごり、鳴ける鶯、
わかき日の薄暮のそのしらべ静こころなし。
*北原白秋「室内庭園」より。
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