2021年11月22日月曜日

昼と夜

  

まだ世界ができたての頃

紺碧の海を見下ろす崖の上で

駆けっこしている

金髪の少年と

黒髪の少年

 

金髪の少年の名は

パエトン

黒髪の少年は

エパポス

 

駆けっこに勝ったのは

金髪のパエトン

 

ふたりの

父自慢がはじまった

パエトンの父はアポロン

エパポスの父はゼウス

 

ゼウスに

小さな稲妻の投げ方も教わって

この前なんか

ハゲタカを三羽も殺したし

漁船を脅かしたり

山火事を起こしたりしたよ

と言うエパポスに

パエトンも

黙っていない

 

パパは

馬に馬具をつけ

太陽の金色の戦車を天空に走らせる

それが

昼というものなんだよ

 

それから

大海原の潮流の上を

船に乗って

東の宮殿に帰るのさ

それが

夜というものなんだよ

 

まだ

パエトンが

父の戦車を借りる前

あの悲劇に見舞われる前の

がんぜない

昼と夜の

大きな

大きな

お話である





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