2021年12月10日金曜日

もうこっちのものさ

   


京都御苑の脇にある廬山寺は

紫式部の住まいがあったところという

 

もちろん

彼女の生きた頃とは

まったく佇まいは異なっている

 

考古学と文献史学から古代学を提唱した

角田文衛博士の記した

簡易な説明プレートを見ていたら

「名は香子(たかこ)と言ったらしい」とあって

それまで

ムラサキシキブ

ムラサキシキブ

と言い習わしてきただけの

怠惰な心に

ふいに蒼空が裂け

紫式部のイメージが

激変していくのを感じていた

 

香子(たかこ)だったのか・・・と

わたしは新鮮になった

つかまえたよ

と呟きさえしたが

それはやはり

香子(たかこ)に対して

だったかもしれない

 

名がわかれば

もう

こっちのもの





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