煩悩を切り捨てた
などと言って
陰茎を切り捨てたようすを見せて
物乞いして歩いている
騙り法師のおもしろい話が出てくるのが
宇治拾遺物語の
中納言師時法師之玉茎検知事
中納言、「さて煩悩を切り捨つとはいかに」と問給へば、
「くは、これを御覧ぜよ」と言ひて、
まことにまめやかのはなくて、ひげばかりあり。
陰茎を切り捨てたという法師が
これを御覧ください
と衣の前を掻き上げて見せると
ほんとうに「まめやか」のはなくて
「ひげ」ばかりがある
と書いていて
この言いかたがおもしろくて
宇治拾遺はいいなあ
と思わされる
「まめやか」というと
まじめなようす
誠実なようす
本格的なようす
と古語辞典には出てくるが
ここでは
衣を上げたところに見えるべき
陰茎のことを言っているので
それを「まめやか」などと呼ぶのが
なんといってもおかしい
陰毛のことを「ひげ」と呼んでいるのも
ほぉぉぉ、「ひげ」ねェ・・・
と感心してしまう
中納言師時は
この法師め
じつは陰茎をうしろに持って行って
隠しているなと見抜いているので
従者二三人に足を押さえさせて
12,3歳の小侍に股の上を撫でさせる
さて、小侍の十二、三ばかりなるがあるを召し出でて、
「あの法師の股の上を、手をひろげて、上げ下しさすれ」
そのままに、ふくらかなる手して、上げ下しさする。
小侍の「ふくらかなる手」というところが
これがなかなか絶妙で
ふっくらした柔らかな手としているところ
なかなかどうして
ただの少年ではないとわかる
まじめくさった顔をして
法師は「もう、そのままにしてください」
などと言っても中納言は
「ほれほれ、よさそうなぐあいになってきたぞ。さすれ、さすれ」
と続けさせる
そうするうちに
毛の中より、松茸のおほきやかなる物のふらふらと出で来て、
腹にすはすはと打ちつけたり。
毛のなかから
松茸のいかにも大きなのが
ふらふらと出てきて
法師の腹に
すはっ
すはっ
と打ちつけた
というのだから
この法師
りっぱな逸物を
お持ちでござった
「おほきやかなる物」という
古語のあじわいが
こっくりとしていい
この話のいいところは
このさまを見て
中納言師時も大笑いし
まわりの従者たちも大笑いし
法師までもが
手を打って転げまわって
大笑いして終わるところ
ちなみに
睾丸のことは
そのまま
「袋」と呼んでいる
「下にさがりたる袋」や
「下の袋」というふうに
書いている
ちなみついでに
もうひとつ
中納言師時は
村上源氏の左大臣源俊房の子
『金葉和歌集』入集の歌人で
権中納言正三位であった
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