正岡子規の全歌集
『竹之里歌』*の
最初のページには
明治十五年の作がたった一首だけ
隅田川堤の櫻さくころよ花のにしきをきて帰るらん
ただ
これだけ
歌人
正岡子規の歩みは
この一首からはじまる
まだ
江戸時代ふう
だと
言えよう
子規の個性も
まだ
開花していない
とも
言えよう
しかし
子規の短歌と俳句に特有の
あのすがすがしさは
すでに
現われている
花のにしきをきて帰るらん
の
帰るらん
が
子規なのだ
帰っていってしまうひと
花の
あるところに
居続けないひと
しかし
花のにしきは
ちゃんと
着て
*正岡子規全歌集『竹之里歌』(土屋文明・五味保義編、
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