灯の暗き昼のホテルに憩ひゐる一時あづけの荷物のごとく
佐藤佐太郎の
昭和五十一年の
短歌
一時あづけの荷物のごとく
でない
わたしたちは
いるか?
そんな時が
ある
とでもいうのか?
わたしも
また
灯の暗き昼のホテルを
思い出す
ひとの少ないロビーで
または
ふいに到着客で賑やかになるロビーで
連れを待って
これから行く先のことを
あいまいに想像したり
気にかかっている用事いくつかを
これもまた
あいまいに思ってみたり
灯の暗き昼のホテルに
憩って
憩ったりして
何度も
気づいた
このホテルの
此処に
わたしを運んできたものを
わたしはやはり
ついに知りえない
と
ソファに身を沈めて
灯の暗さに
異様な感慨を覚えているわたしを
ついに
わたしは知らない
と
0 件のコメント:
コメントを投稿