「中学受験をするか？」
と聞かれて
べつに大したことはない
と子どものアタマでは思っていたものだから
「する」
と答えたのを機会に
小学五年生から
四谷大塚進学教室というところに通った
毎週毎週
日曜日はテストを受けに
東京のあちこちの会場に行く
一週間のあいだに
四谷大塚進学教室特製テキストで
国算社理のテスト範囲を自習しておかねばならず
漢字ドリルや計算ドリルなどもあって
けっこう忙しかったが
小学校よりも先に先に学んでしまうので
面白くもあった
少なくとも小学校の授業内容を
勉強する必要がまったくなくなるので
学校については
楽といえば楽だった
いつもではなかったが
翌日のテスト範囲の内容を
予備校風に教えてくれる授業を土曜日に受けに行く時もあって
聞きに行ったからといって
本当によくできるようになるかというと
そういうわけでもなく
貴重な土曜日は
同じ時間をかけて
家でひとりで勉強していたほうがよほどよかったが
それでも
社会科の下平先生などは面白くて
子どもたちには大人気だった
青山学院の中等部だか高等科だかの先生だったらしいが
歴史も地理も面白く教えてくれる
シルクロードは絹の道
というのをはじめて教わったのは
四谷大塚の中野教室の下平先生の時間だったが
「この道を通ってむかしは絹を運んだわけだよ
絹で首を縛られると苦しいから
苦しい道路なわけだ
道路苦し
ドーロクルシ
で
逆に読めば
シルクロード！」
などという
業界隠語的な言い方が
子どもには楽しくてしょうがなかった
そういえば
あらゆるホラー映画やＳＦ映画や
ナンセンス映画を見る意志を固めているなりゆき上
このあいだ
『ウィジャ・シャーク 霊界サメ大戦』という
史上最低のどうしようもない映画を見てしまった
最下等の映画には十分慣れているのに
この『ウィジャ・シャーク 霊界サメ大戦』ときたら
あまりといえばあまりに下らな過ぎ
ひどすぎて
一度見たら二度と忘れられないという
真逆の意味で特筆すべき
映画の質がそのままホラーな
ホラーの位相が他の映画の追随を許さないような
じつにユニークな
唯我独尊
一期一会な映画だったが
この映画の中に
若いのに余分なお肉のついている白人お姉さんたちが数人出てきて
必要もないのに
なぜかビキニになって肌を露出したがるのだ
肌を見せられたからといって
べつに殊更気を惹かれもしない白人田舎ふうお姉さんたちで
ここがまた
この映画のひどくイタいところなのだが
後で視聴者のコメントを見ると
この白人お姉さんたちのことを
しかるべく
チャンネーたち
と呼んでいる人がいて
なるほどねえ
チャンネーねえ
と感心した
世の中には
ネーチャンと呼ぶのももったいないような
チャンネーと呼ぶべき存在がいるのだ
俄然
下平先生を思い出してしまった
ドーロクルシ！
ドーロクルシ！
ワイハ！
シースー！
ザギン！
ジャーマネ！
ギロッポン！
マイウー！
レーコー！
の世界！
チャンネーなのだ！
チャンネー！
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