屋上はまるで
巨大なテーマパークのようだった
マンションの最上階の
いちばん高価な住まいは
そのテーマパークもどきの真ん中にある
ひとびとが
いつも
歩いていたり
はしゃいでいたり
なんやかや騒いでいたりするが
完全防音で
そんな周囲の音は
中までは
まったく聞こえてこない
しかも
ミラーガラスで
中からは外の様子が見えるが
外から中は見えない
住んでいる友人家族には
まだ小さな子どもがふたりいるが
生活のうえでは
こんなところでも
まったく困らないと言う
(もちろん
(みずから望んでここに住んでいるのだから
(困るわけもないが
でも
どうしてこんなところに住むの?
聞くと
いずれ夫婦だけになり
さらに
いずれひとりになったりするとき
ここだと
まわりにひとがいつも見えていて
さびしくないだろうから
と
友は言った
その頃には
もう
この住まいも
まわりのテーマパークもどきも
とうに古びていて
もうだれも来なくなり
かえって
壮絶にさびしくなっているのでは?
・・・とぼくは思ったが
言わないでおいた
テーマパークもどきの中には
レストランもいっぱいある
そのうちの
最高のレストランに連れて行ってもらい
いっしょにデイナーをとった
豪奢なディナーセットで
こんな見栄えのいい
すごいディナーは久しぶりだった
ところが
食べてみると
ぜんぜんうまくない
あれ?
おや?
と
思いながら食べる
うまくない
まずくはないのだが
うまくない
どれだけ食べても
あれ?
おや?
なのだ
友もその妻も
うまそうに食べている
豪華この上ない
色彩豊かな
香りもいい
ワイングラスも
食器も
きらきら輝いて
温かいものはほかほか湯気も立って
すごいすごいディナーだ
ぜんぜんうまくない
あれ?
おや?
ぜんぜんうまくない
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