Tempus tantum nostrum est.
Lucius Annaeus Seneca
サスペンスや推理小説を書く作家なのに
ギヨーム・ミュソは
けっこうブッキッシュな引用や銘句を多用する人で
文学や思想の古典を相当読んでいるがわかる
世界の四十カ国語以上に訳されている売れっ子作家だが
文学好きや思想好きなら
ちょっとくすぐられるような箇所が多い
ぼくは6歳の頃から、
ちょっと長い距離を
JRの列車に揺られながら
この記述に逢着して
なんだか
けっこうおもしろいサスペンス作家だな
と感心してしまった
電車での
おもしろくもない環境のなかでの
移動のさなか
ミステリーのなかで
ふいにこんな一節に出会うと
ちょっと
特別の時間に恵まれたような気になるものだ
なにかというと
カミュだのフロベールだのプルーストだのと言う人が
もしギヨーム・ミュソを読んでいないとしたら
じつは大した読書家ではないとわかる
外国語の本読みをする人は
古典も現代のミステリーも甘い恋愛物も読まないと
その外国語の射程に狂いが生じる
となると
死ぬまでのあいだ
無限に新刊本を買い続けて
めくり続けるという作業に追われ続けることにもなる
カミュだのフロベールだのプルーストだのに安住しているわけには
まったくいかないことになる
ギヨーム・ミュソのこの本の
ほかのページを
ぱらぱら見ていたら
セネカの引用が見つかった
時間だけがわれらに属する。
なかなか
やるじゃん・・・
と
窓外を過ぎていく風景を見
本に目を戻して
セネカのラテン語を
見直す
Tempus tantum nostrum est.
*Guillaume Musso La Fille de Brooklyn (XO éditions, 2016)
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