透明の犬が中央階段を上り下りしていると聞いたから
確かめに行ってみたら
犬の姿に似たゼルピロプロスだった
犬の姿に似た
といっても
ある面から見ればそう見えないこともない
という程度で
むしろ彗星メラムントから放出された雲状のガスが
わずか数日だけ取った
太古の軍艦ミズルメントルにこそ似ている
ミズルメントルには
私の娘の婚約者だったワーギルが艦長として乗り込み
二度と戻ってこなかったことがあった
娘の悲しみをひしひしと感じながら
大洋に臨む館で
初夏の美しい日々を過ごしたが
その地に咲き誇るゼツメラミスの花々が
思えば
唯一の慰めになってくれたものだった
私は娘が他の男を見つけて結婚してくれればと
ひそかに願ったものだが
娘はワーギルへの愛に生き
ずっと独身を貫いた
それはそれで
見事なものと思えた
息子たちは何人かの子に恵まれ
そのうちの女の子たちは
戻らないワーギルへの愛に生きる伯母への敬意を
各自の心に育んだ
ひとりは奔放な人生に旅立ち
歌い舞う高級娼婦のようになったが
その子の生んだ娘は我が家に引き取られて
なぜか
ワーギルへの愛に生きる大伯母に懐き
一緒に暮らすようになった
私の墓に
いつも最も美しい花束を捧げてくれるのは
娘とこの子となり
墓のかたわらで
たびたび
魂に染みるような歌を歌ってくれたものだった
ワーギルの霊にも
私の霊にも
とこしえの幸いのあらんことを
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