2022年6月29日水曜日

せっかくの夏だったのに

  


夏は暑くて

汗ばんで

疲れるから

いやだ

 

単純な印象形成をして

嫌ったり

うっとうしがったりする人が多いが

ぼくは夏の子なので

暑いと

ただ暑いだけでうれしくて

もうしあわせになってしまう

じぶんで盛り立てる努力をしなくても

暑さでいいぐあいに血圧が上がって

それだけで祭りのようになるので

ただ夏というだけで

ただ暑いというだけで

もう言うことなしになる

 

からだはほかの人と同じだから

汗が出続けて

シャツも下着も濡れるし

取り替えたって次のも濡れるし

それはそれでもちろん面倒にはちがいない

しかし夏の暑さという海のなかに入っていると思えば

汗で濡れ続けるのなどあたりまえで

そういうものだと合理化してしまえば解決する

 

暑くていやだ

という言葉ばかりを言う人たちには

近づきたくもない

せっかくの夏という祭のさなかにいるのに

暑くていやだの

汗が出ていやだの

疲れるだの

だるいだの

そう洩らす人たちが

ほんとうに嫌でたまらない

 

どうして

暑いね

汗が出るね

ぐらいで言うのを留めて

後は黙って

団扇を扇いでいたり

ときどき冷たいものを飲んでみたり

そんなふうに

静かに涼を楽しむことが

できないんだか

と思う

 

いやだ

いやだ

と言っているうちに

あなたの夏も

終わっていってしまうんだよ

言ってやりたい人が

いっぱいいた

 

みんな

終わっていってしまったよ

ほんとうに

 

せっかくの

夏だったのに





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