飼っていると
スズムシの音が
だんだん
枯れてくるのが
わかる
喉で鳴いているのではなく
羽根をすりあわせているのだから
羽根がすり減ったり
破れてきたり
壊れてきたりするのだろう
羽根を立てる筋肉も
疲れ果てて
衰えてくるのかもしれない
毎日
つぶさに見続け
聴き続けていると
虫という姿かたちをとって
あらわれ出てきた命の
不思議さや
哀れさも
こちらの時間に染み入ってくる
時間は命だから
時間が命だから
かれらのあらわれかたの
不思議さや
哀れさは
わたしの命に染み入ってくるのだ
六月頃に孵化して
生き長らえるにしても
せいぜい
四ヶ月か五ヶ月の
スズムシの命を
ずいぶんと短いような
それでも
そこそこ長いようなものとして
夏から秋
見続け
聴き続けている
こんなふうに
人間の生きざまを見たり
聴いたりし続ける
天界あたりの住人なども
きっと
いたりするのだろう
ずいぶんと短いような
それでも
そこそこ長いようなものとして
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