2022年11月5日土曜日

落差で生まれ続ける静寂

 

 

どんどん悪人になっていくぼくがかんばしい

しかもどんどん胎児になっていくのだ

あたいのお腹のなかへのかんばしい旅だと最初思いかけたが

胎児のなかにあたいもお腹も包まれてしまうのが本当で

あたいとお腹は胎児のなかでけっこう張り合っている

そうしてぼくの居場所はそこにはまったくなくて

かんばしさが宇宙のこうばしさのなかに漂って

どんどん悪人になっていくのだなぜだかわからないが

目が見えているというのが光に射られていることであるように

悪人になっていくというのはなっていくことが悪人を食っていくの

宙を浮かんでいく

初時雨

ざらざらビニール屋根には音立てて降り落ちて

立つ

音があるからこそ

落差で生まれ続ける静寂がある






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