2023年3月29日水曜日

定義


 

おそるべき物質主義者のわたくしは

定義する

定義し続ける

 

精神とは

脳細胞たちの働き方の

単なる癖だと

 

霊とは

多すぎる記憶たちの

夢の余韻

それも

やや離れて眺められた

春霞のような

星雲状の余韻だと

 

人生とは

ある時あやまって作られてしまった

人生という語が

ひとりさびしく鏡となって

肉体の諸細胞たちの刻々の現象や

脳細胞たちの電気信号への刻々の反応現象を

無秩序に乱反射しているのを

あえていくつかの紋切り型に無理に嵌め込もうとして

うらさびしい場末の公園の水飲み台の

ゆるく開けられっぱなしの蛇口から

ちょろちょろ

水が流れ落ちている光景だと

 

おお!

そして曇天は

いずれ晴れ間というものが

ある日

また

見られるかもしれないと

わびしい愚かな期待を抱いてしまいがちになる

怠惰で

最期にむかう衰弱の

まだ数段階前の

いちども自分なるものに逢着したことのない視線を力なく放射する

眼球をごくごくスタンダードにふたつ嵌め込まれた頭蓋の

奥に隠れ続けたままの脳の襞の

皮の表面の粘液の

ヌルッとした

解剖されるのでなければ

誰にも触れられることもなく消滅していくだけの感触

なのだと






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