2023年3月12日日曜日

ゲルマニウムラジオ

  

 

小学4年か

5年の時だったか

 

ゲルマニウムラジオという

電池なしで聞けるラジオがある

と知って

プラスチック製のロケット型の

8センチぐらいのキットを

買ってみた

 

半田ゴテで

ちょっと工作すると

すぐにできた

 

その頃

二段ベッドの上階に寝ていたので

蛍光灯の電灯線に

アンテナの役目をするコードを巻いて

イヤホンを耳につけてから

ロケットの先っぽにある

銀の棒を引っぱり出したり

引っ込めたりして

局を探した

 

ラジオでいろいろなものが聞けるのは

もちろん知っていたし

幼いころからラジオいじりもしていたけれど

じぶんで作ったゲルマラジオから

ちゃんと放送が聞こえてくるというのは

新鮮な驚きでもあり

言いようもない楽しさがあった

 

まだ子どもなので

8時を過ぎると寝るように言われるが

その時間には

夏などナイターをやっていて

電池もなく

コンセントから電気を取ってもいないラジオで

小さくても

ちゃんと音が聞こえるのが

うれしかった

 

その後

トランジスターラジオを作ったりして

ちゃんと電池を入れ

もっと音が出るようになっているものを

ずいぶん楽しんだりもしたが

はじめて作った

ゲルマニウムラジオの楽しさを超えるものには

とうとう出会わなかった

 

赤い部分と黒い部分が合わさっていた

ロケット型のあのラジオは

いつのまにか

手から離れ

どこかに行ってしまったけれども

あのラジオで聞く

真夏のナイターの歓声ときたら

まるで映画の中の一場面のように

いまでも生き生きと

思い出されてくる

 

聞いている間に

うとうとと眠ってしまうのだが

子どもながらに

眠ってしまっても大丈夫

電池は

入っていないから

電気がムダになったりはしない

などと思いながら

安心し切って

うとうと

寝落ちしては

ホームランやヒットの歓声に

ときどき

ハッと目覚めたりして

そうして

しばらく聞いているうちに

また

いつのまにか

うとうと

眠ってしまうのだった

 




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