小学4年か
5年の時だったか
ゲルマニウムラジオという
電池なしで聞けるラジオがある
と知って
プラスチック製のロケット型の
8センチぐらいのキットを
買ってみた
半田ゴテで
ちょっと工作すると
すぐにできた
その頃
二段ベッドの上階に寝ていたので
蛍光灯の電灯線に
アンテナの役目をするコードを巻いて
イヤホンを耳につけてから
ロケットの先っぽにある
銀の棒を引っぱり出したり
引っ込めたりして
局を探した
ラジオでいろいろなものが聞けるのは
もちろん知っていたし
幼いころからラジオいじりもしていたけれど
じぶんで作ったゲルマラジオから
ちゃんと放送が聞こえてくるというのは
新鮮な驚きでもあり
言いようもない楽しさがあった
まだ子どもなので
8時を過ぎると寝るように言われるが
その時間には
夏などナイターをやっていて
電池もなく
コンセントから電気を取ってもいないラジオで
小さくても
ちゃんと音が聞こえるのが
うれしかった
その後
トランジスターラジオを作ったりして
ちゃんと電池を入れ
もっと音が出るようになっているものを
ずいぶん楽しんだりもしたが
はじめて作った
ゲルマニウムラジオの楽しさを超えるものには
とうとう出会わなかった
赤い部分と黒い部分が合わさっていた
ロケット型のあのラジオは
いつのまにか
手から離れ
どこかに行ってしまったけれども
あのラジオで聞く
真夏のナイターの歓声ときたら
まるで映画の中の一場面のように
いまでも生き生きと
思い出されてくる
聞いている間に
うとうとと眠ってしまうのだが
子どもながらに
眠ってしまっても大丈夫
電池は
入っていないから
電気がムダになったりはしない
などと思いながら
安心し切って
うとうと
寝落ちしては
ホームランやヒットの歓声に
ときどき
ハッと目覚めたりして
そうして
しばらく聞いているうちに
また
いつのまにか
うとうと
眠ってしまうのだった
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