2023年4月20日木曜日

これほどまでにすべてを忘れてしまう

 

 

ちょっと長めの文章を書いていると

それ以外の領域に

なかなか

戻って来れなくなる

 

世田谷の代田1-1-5のホース115―205に部屋を借りて

書斎としていた頃

仮題で『幽』としていた小説を書いていたら

その世界から戻れなくなり

数日間

もぬけの殻のような心身になった

 

現実と呼ばれる人界と

じぶんの中に湧き出るフィクション界との間の行き来のコツを

まだ身につけていなかったからだ

 

ぼくが抱えて生まれてきた

たくさんのフィクション世界を言語化していくのには

ふたつの界の行き来のコツを取得する点で

まだまだ

時期尚早だと結論して

それ以降

日本語の表現練習の器として

自由詩形とエッセー散文と論文と短歌と俳句だけを使うことにした

それらの場合は

自分の意識を人界に置いたままで

言語配列をしていくことができるからだ

 

長めのフィクション用に

言語配列をしていくとなると

そうはいかない

人界のあらゆることを脱ぎ捨ててしまって

ニュースにも天候にも

飲んだり食べたりすることにさえ

意識が向かなくなってしまう

言葉を並べていく他にはこの世と接点を一切持たない機械のように

なってしまう

 

このところ

ひさしぶりに長めの文章のほうに行っていて

あ? そういえば

ぼくは自由詩形もずいぶん使ってきていたんじゃなかったのか?

なんて

今になって

思い出し始めている

始末

 

これほどまでに

すべてを忘れてしまう

 

 

 



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