2023年6月15日木曜日

おお! にっぽんの六月よ!


 

梅雨という

当て字にふさわしく

赤紫蘇や

きみどりの梅の実が

スーパーマーケットの棚にさえ摘まれて

趣のきわまる

おお!

にっぽんの六月よ!

 

紫陽花の大輪小輪が

両側からいっぱいに咲き出て

通り抜けようとする

きみの腰を腿を脚をたわわに濡らして

ぼくらの今宵の

しとど濡れそぼる闇のたわむれを

先んじて祝福してくれている!

 

おお!

にっぽんの六月よ!

家々の屋根も

路地裏の舗石も

古井戸の歪んだ蓋も

そして

長雨に染みる壁のビル群も

しとど濡れそぼる

きみの隠しどころへの

参道となって

ビニール袋から取り出した梅の実の

ひとつひとつを

やわらかな指先で弄びながら

ふざけて

きみは付けようとする

まるでイヴのように

紫濃い

赤紫蘇の大きな葉の一枚を

きみの丘の上に

 

 




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