―偽善者の読者よ、―おれの同類、―わが兄弟よ!
シャルル・ボードレール『悪の華』
―Hypocrite lecteur, ―mon semblable, ―mon frère !
Charles Baudelaire « Les Fleurs du Mal »
詩歌はことばによる落差の追求であり
例外はまったくない
伝統に根ざした
品のあることばづかいで
型どおりの美や
型に嵌まった快楽を求める言語表現行為に
停滞が多く生じるようになると
あえて俗な日常語の起用が行なわれたり
中でも
ことさらに品格のない
低教養層の乱暴な日常語の採用が行なわれたりするが
これらはもちろん
つよい印象を一気に生み出す
安易な落差の獲得のためのものである
明治時代に入って正岡子規がぶち上げた
あまりに愚劣な『古今和歌集』否定の論説も
もちろん
チープな落差を発生させるための方便であった
A形式の尊ばれる流れの中で
形式にもなっていないBをぶち上げて
造反有理を演じてみるような
愚かで浅薄な児戯が詩歌では連綿と続いてきていて
よい子のみんなは
チラリとであれ目をくれてやる必要なんて
ありません
この物質界の人生なんて短いのですから
すこぶる物質的に
金儲けと愛慾と貪欲と差別と安逸と怠惰にどうぞ
励んでくださいましな
「―偽善者の読者よ、―おれの同類、―わが兄弟よ!」
とはボードレール兄の
数百年に一度の大ホームランのお言葉!
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