2023年7月9日日曜日

入谷のあさがお市

  

 

入谷のあさがお市に行ってみると

車道は通行止めにしているし

あさがおを売っている屋台だけでなく

お祭りの時のように

いろいろな屋台がずらっと並んでいて

ひともずいぶんと集まって賑やかで

道路にお尻をつけて座ってものを食べたり

股を押っ広げて座って飲んだりしているひとも多く

なんだか一昔もふた昔も古い東京のようだと

ずいぶん驚いてしまった

 

そんな雰囲気のなかをしばらく

あっちへ行ったりこっちに戻ってきたりして

よさそうなあさがおの鉢を探しながら

歩き続けてみるのも

なんだかのんびりした東京の夏であった

 

母方の曾祖母は下谷の生まれで

江戸時代から続く大きな筆屋「池田屋」の娘だったが

もうその店は残っていないし

その店にまつわる伝説や言い伝えも残っていない

それでもこんな空気のなかで娘時代を生きたのかと

思いながら土地の波動をちょっとは感じようとしてみた

昔は大きな竹やぶがあったそうで

そこの竹を使って筆の軸を作ったそうな

曾祖母の母親などは上野の戦争の音を聞いていて

あのアームストロング砲の音もたぶん聞いているはず

 

珍しいあさがおの團十郎という品種を見たかったが

品数が少ないそうでどこの店でも見られなかった

明日入荷という貼り紙はいくつか見たが

まあふつうのあさがおの元気そうなのを買えばいいやと

四色混じりで植えてあるのを一鉢買って

入谷口から上野駅に入って帰ってきた

 

いくら曾祖母の生まれ故郷であっても

わたしにはほとんど未知の下町空間体験である

 

 



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