子どものころから
夏はだいたいどこでも楽しかったが
どこに引っ越して住んでも楽しい感じだったのは
窓から外をながめて
空が青かったり
入道雲がわいてきたり
木々や草のみどりがうんざりするほど濃かったりするのが
楽しくてしょうがなく見えたから
名所や避暑地でなくても
夏の空や雲や
雑草や雑木林のみどりというのは
ぼーっと見ているだけで楽しいので
ぼくの場合困ったり飽きたりするということがない
困るのはむしろ
それらから目が離せなくなってしまうことで
やらなければならない夏の宿題とか
手伝いとか買い物とか
昼寝だとかを
ともすれば
しなくなってしまうことだった
暑くて汗が出て
ほんと
イヤになる
なんて思ったりもしたが
そう思うのは
大人がそういうのをさんざん聞かされるのを
じぶんの中に録音してしまっているのが
再生されてくるからに過ぎない
ともわかっていた
つまりじぶん自身の思いではなく
夏は暑くて暑いのはイヤなものだと思うのがふつうだ
という洗脳だと
ぼくの奥底ではわかっていた
ぼく以外の連中は
せいぜい
勝手に暑がって
イヤがってろ!
とぼくは思っていたし
今でも思っている
子どものころに
かんかん照りの日中に
原っぱを駆けまわってバッタや蝶を追い続け
雑木林でカナブンやクワガタや
クヌギの根っこを掘ってカブトムシを探し続けたように
ぼくはこの真夏の地球で
たったひとりで
バッタや蝶やカナブンやクワガタやカブトムシ的なものを
忙しく追い続けている
ぼく以外の連中は
せいぜい
勝手に暑がって
イヤがってろ!
今でも
もっと激しく
ますます激しく
思っている
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