2023年8月25日金曜日

いつも老婆

 


 

身長169センチだったという

オードリー・ヘップバーンをめぐって

ちょっと考えているうちに

身長174センチだったという

ローレン・バコールのことも思い出したりして

どうでもいいことだが

ハイヒールを履くと180センチ以上に見えたりする

意志と自我をしっかり持った女なら

やはりバコールが演じるのにふさわしいが

『ティファニーで朝食を』のように

内心が未熟で援助交際をしているような役柄を演じるのには

きれいなドレスを着ても頼りなさの出せる

ヘップバーンのほうがいい

と思うことに

落ち着く

 

『ティファニーで朝食を』のオープニングでは

ヘップバーンは黒いドレスに

白真珠(っぽい)玉のいっぱいついたネックレスをつけて

ずいぶん豪華に見えるが

靴は低いヒールを履いているので

ドレスの足元がちょっと幼くもたつく

ティファニーのショーウィンドウを見ながら

デニッシュを袋から出し

齧る時にも

ぎこちなさがつきまとう

 

じつはちゃんとした生活の不得意な

未熟で不安定な娘だということを

そんなところから表現しておいているのが

『ティファニーで朝食を』のオープニングなのだ

豪華さに遠く

ただ華やかさに憧れて

あやしい暮し方をしている娘の話なのだ

 

そんなところまで見抜けないで

若い頃は

冒頭から豪華なシーンをぶつけてくる映画だなァ

などと思っていた

 

ヘップバーン演じるホリー・ゴライトリーが

デニッシュを食べ終わって

ティファニーのビルから離れていく時

あいかわらず歩き方には幼さが混じっているが

何度も見返しながら

老いも深く混じっているのに気づいた

 

ヘップバーンだから

ホリー・ゴライトリーだから

というのではない

 

男たちだけは

きっと

いつも見抜いていると思うが

女たちが歩く時は

じつは

いつも老婆

 

若くても

幼くても

元気で

活力ある熟年期でも

いつも老婆

 

 




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