ヨブの叫びを
聞き直しておこう
だからわたしは言う、同じことなのだ、と
神は無垢な者も逆らう者も
同じように滅ぼし尽くされる、と。
罪もないのに、突然、鞭打たれ
殺される人の絶望を神は嘲笑う。
「ヨブ記」9・22-23
これは
ユダヤ教やキリスト教の解釈のしかたの外に立って
おそらく
マイスター・エックハルトの勧めるであろう
無知を以て
魂の貧しさを以て
素朴に読めば
地上での生の条件を
明晰に認識した発言と見える
最良のかたちで表明された実存主義そのもの
と言ってもいい
人間の側でどんな思いや信仰や態度を持とうとも
地上では
みな滅び尽くされる
寄ってくる虫を人間が潰すように
食べる動物を人間が情け容赦なく屠殺するように
木や草の葉を毟って人間があたりまえに噛み砕くように
自然法則と存在法則そのものの呼称である「神」は
人間をひとり残らずかならず滅ぼす
旧約聖書は
人間みなを滅ぼす力に対し
抵抗しようとせずに
ひたすら滅ぼされよ
と説く滅びの書である
人間の側では
どうにかすれば滅びを免れうるのではないか
と妄想するような
いかなる望みも企みも持ってはいけない
自然法則と存在法則の前でただの死すべき家畜であり
未来には確実な滅びしかなく
それを正面から認識して
限りある地上の生を生きることこそが
唯一人間に可能なことであり
人間の唯一の栄光である
と教えている
希望も期待もなく生きよ
希望も期待もなく生きてみよ
と厳しく教えている
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