2023年12月13日水曜日

窓のガラスからの小鳥たちのさえずり

 

 

 

夜も

更けに更けたものの

夜明けまでは

まだ

もうしばらく間がある

という

頃でした

 

パソコンでの仕事がありましたので

机にむかって

ひとりで

あれこれと

忙しくしていました

 

ふと気づくと

チュンチュンという

小鳥のさえずる声が

聞こえて

いるのです

 

それも

一羽ではなく

何羽かいて

おたがい

おしゃべりするように

チュンチュンと

声を出しているのです

 

ああ

もう夜明けなのか

夜明けなので

小鳥も啼き出したのか

 

そう思いましたが

いいえ

そんなはずはないのです

夜じゅう

作業をし続けていたとはいえ

まだまだ

明けがたにはなりません

時計を見ると

三時半頃でした

 

それでも

チュンチュンという声は

聞こえて

くるのです

一羽ではなく

何羽かいて

チュンチュンと

声を出しあっているのです

 

机から離れて

すこし離れたドアのところへ行き

そこから

ヴェランダに出てみました

 

夜が明けなくても

ひょっとして

ヴェランダに小鳥が集まって

夜明けに備えて

声を出す練習でもしているのかもしれない

そう思ったのです

 

ところが

美しいと言いたくなるほどの

まっくらな夜空の下に

あちこちのビルの明かりは点いているものの

ぐっすりと眠りこけている

街の静寂があるばかりです

 

小鳥のいる気配など

まったくなく

ましてや

何羽かいるような様子など

これっぽっちも

ありません

 

机に戻ってきて

またパソコンに向かい

やりかけだった仕事を

ふたたび

はじめてみました

 

すると

どうでしょう

いくらもしないうちに

また

聞こえるのです

 

チュンチュン

チュンチュン

一羽どころではなく

何羽かの小鳥が

おしゃべりするように

元気に

さえずっているのです

 

おかしいなあ

思いながら

机のわきの窓に近づいてみると

チュンチュン

という声は

窓のなかから

聞こえてくるのです

 

窓はガラスですから

もちろん

窓のなかなどありません

 

けれども

窓のこちら側になど

小鳥はいないし

外のヴェランダ側にもいないのは

さっき

ヴェランダに出て

たしかめたとおりです

 

声は

たしかに聞こえています

窓ガラスを仔細に見てみても

小鳥のすがたなど

もちろん

見えません

 

しかし

たしかに

聞こえてきます

 

聞こえてくる

というより

ちゃんと

すぐ間近くにいるように

聞こえているのです

 

仕事を済まさないといけないので

さえずりを聞きながら

パソコンに向かい直しましたが

そのうち

小鳥たちの声は

聞こえなくなりました

 

ああ

夜明けが近いので

みんなで飛んでいったのかな

などと思いましたが

おやおや

こんなふうに

自然に考えてしまっているじぶんも

ちょっとおかしいなあ

と思い直しました

 

この夜の

小鳥たちのさえずりが

なんだったのか

わかりません

 

朝方まで起きていて

夜じゅう

作業をしていたものなので

ちゃんと起きているつもりでも

どこか

うとうとしてしまっているようなところが

あったのかもしれません

 

けれども

窓のガラスから

小鳥たちのさえずりが聞こえてきていた

と感じたのは

ほんとうの話なのです

          

 





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