夜も
更けに更けたものの
夜明けまでは
まだ
もうしばらく間がある
という
頃でした
パソコンでの仕事がありましたので
机にむかって
ひとりで
あれこれと
忙しくしていました
ふと気づくと
チュンチュンという
小鳥のさえずる声が
聞こえて
いるのです
それも
一羽ではなく
何羽かいて
おたがい
おしゃべりするように
チュンチュンと
声を出しているのです
ああ
もう夜明けなのか
夜明けなので
小鳥も啼き出したのか
そう思いましたが
いいえ
そんなはずはないのです
夜じゅう
作業をし続けていたとはいえ
まだまだ
明けがたにはなりません
時計を見ると
三時半頃でした
それでも
チュンチュンという声は
聞こえて
くるのです
一羽ではなく
何羽かいて
チュンチュンと
声を出しあっているのです
机から離れて
すこし離れたドアのところへ行き
そこから
ヴェランダに出てみました
夜が明けなくても
ひょっとして
ヴェランダに小鳥が集まって
夜明けに備えて
声を出す練習でもしているのかもしれない
そう思ったのです
ところが
美しいと言いたくなるほどの
まっくらな夜空の下に
あちこちのビルの明かりは点いているものの
ぐっすりと眠りこけている
街の静寂があるばかりです
小鳥のいる気配など
まったくなく
ましてや
何羽かいるような様子など
これっぽっちも
ありません
机に戻ってきて
またパソコンに向かい
やりかけだった仕事を
ふたたび
はじめてみました
すると
どうでしょう
いくらもしないうちに
また
聞こえるのです
チュンチュン
チュンチュン
と
一羽どころではなく
何羽かの小鳥が
おしゃべりするように
元気に
さえずっているのです
おかしいなあ
と
思いながら
机のわきの窓に近づいてみると
チュンチュン
という声は
窓のなかから
聞こえてくるのです
窓はガラスですから
もちろん
窓のなかなどありません
けれども
窓のこちら側になど
小鳥はいないし
外のヴェランダ側にもいないのは
さっき
ヴェランダに出て
たしかめたとおりです
声は
たしかに聞こえています
窓ガラスを仔細に見てみても
小鳥のすがたなど
もちろん
見えません
しかし
たしかに
聞こえてきます
聞こえてくる
というより
ちゃんと
すぐ間近くにいるように
聞こえているのです
仕事を済まさないといけないので
さえずりを聞きながら
パソコンに向かい直しましたが
そのうち
小鳥たちの声は
聞こえなくなりました
ああ
夜明けが近いので
みんなで飛んでいったのかな
などと思いましたが
おやおや
こんなふうに
自然に考えてしまっているじぶんも
ちょっとおかしいなあ
と思い直しました
この夜の
小鳥たちのさえずりが
なんだったのか
わかりません
朝方まで起きていて
夜じゅう
作業をしていたものなので
ちゃんと起きているつもりでも
どこか
うとうとしてしまっているようなところが
あったのかもしれません
けれども
窓のガラスから
小鳥たちのさえずりが聞こえてきていた
と感じたのは
ほんとうの話なのです
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