2023年12月2日土曜日

あの友だちたちとの宝もの



 

冬らしくなって

寒い

といっても

子どもの頃の冬の寒さは

こんなものじゃ

なかった

 

家のなかでも

朝には

水道が凍っていることがあった

 

小学校に行くと

外の水飲み場の水道管は

ぜったい凍っている

いくら寒くたって

手は洗うし

水も飲むから

水道の栓をひねって

水が出て来るまで待ったりする

まだ出ない

まだ出てこない

なんて

思ったり

言ったりしながら

水飲み場で

友だちたちと

待っていたりする

 

学校の行き帰り

舗装された道を外れると

土のところには霜柱が立っていて

バリバリ壊しながら

その上を歩くのは

ちょっと

ゴジラになった気分で

すごく

おもしろかった

 

手がかじかむのは

あたりまえ

ひび割れができたりするのも

あたりまえ

頬なんか

乾いて

しろっぽくなっちゃって

そこに

ひび割れが

できることもある

 

五年生の時や

六年生の時まで

教室では石炭ストーブで

バケツを持って

石炭を学校の裏へ取りに行く係や

火を付けるのに使う

細く割った薪を取りに行く係や

ストーブの下に溜まる灰を

きちんと掃除して

バケツに入れて捨てに行く係もあって

順繰りに担当は回ってくるので

ぼくらは

どの仕事もやった

 

雪が降っている時に

石炭を取りに行くのは

つらい

 

灰を捨てに行くのも

つらい

 

でも

いま思い出すと

石炭の上に雪が舞い落ちたり

灰の上に舞い落ちたり

さびしい学校裏の黒い土の上に舞い落ちて

だんだんに

積もっていくさまなど

みんな

みんな

ぼくの宝もの

ぼくらの宝もの

 

もう二度と

寒い水飲み場で

水道管の氷が溶けるのを

いっしょに待ったりすることのない

未来永劫

もう

あり得ない

あの友だちたちとの

宝もの





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