2023年12月31日日曜日

ラメちゃんたらギッチョンチョンでパイのパイのパイ

 

 

 

「よし、別の銃を俺にくれれば、

ジョージア行進曲を歌ってやろう」

ハワード・ホークス『エル・ドラド』(1966)

 

 

 

 

日本がいやになることは

もう

いっぱいあるが

1918年(大正7年)に添田知道が作った俗謡

「東京節」こと「パイノパイノパイ」を聞くと

日本人のおふざけ精神が

俄然

よみがえり

たちまち元気になってくる

 

ニッポンもいいかな

捨てたもんじゃないかな

と思えてくるから

大不思議だ

名曲の力というものか

冗談・おふざけ・批評・やじり・皮肉など

満載のことばの力

というものか

 

おもしろくて

滑稽で

おふざけのようでいて

ピリッとひねりの効いた

すごく批判的な

東京案内にもなっている

 

曲はアメリカから借りてしまっている

南北戦争末期の1865年に

ヘンリー・クレイ・ワークが作曲した

「ジョージア行進曲」Marching Through Georgia)で

北軍の退役軍人たちに好まれたという

アトランタ攻めの時の進軍歌で

北軍が南軍を虐殺する時の景気づけの歌でもあった

いまでも南部のアメリカ人からは文句が来ることもあるらしい

 

日本でも好まれて

大日本帝国陸軍が旅順の戦いで歌ったが

イギリス陸軍はインドで歌ったり

第二次大戦中にはアメリカの輸送船団を迎える時にも歌った

作曲家チャールズ・アイブスは

交響曲第4番第2楽章にこれを引用している

 

なんと

大平洋戦争敗戦後に

アメリカ軍が本土上陸してきた時

この「ジョージア行進曲」が演奏されたともいう

 

ラメちゃんたらギッチョンチョンで
パイのパイのパイ
パリコとパナナでフライ フライ フライ

などという

唄のなかに出てくる文句は

わけがわからないけれど

子どもの頃はこれが楽しくて

とんでもなく古い時代の

まったく関係ない唄だというのに

下校時など

くり返し歌って帰った

 

「ラメちゃん」の「ラメ」は

デタラメから来ているとか

「ギッチョンチョン」は

お座敷唄の「ぎっちょんちょん」から来ているとか

当時は高価で

庶民には高嶺の花だった「バナナ」が唄い込まれているとか

洋食の「パイ」や「フライ」は

当時好まれたものだったからとか

「パリコ」は第一次大戦の戦後処理の

パリ講和条約の略だとか

単に当時東京っ子にライバル視されていた

「パリっ子」のことだとか

そういったいろいろな説は

後になって知ったこと

 

令和になってからは

天元ふみというひとが

パロディーを作って唄っていて

これがまた

おもしろくて

お見事

 

「東京節」の歌詞はいろいろあるが

拾いあつめて配してみると

こんなふうになる

 

 

 

東京節(パイノパイノパイ)

 

東京の中枢は丸の内
日比谷公園両議院
いきなかまえの帝劇に
いかめし館は警視庁
諸官省ズラリ馬場先門
海上ビルディング東京駅
ポッポと出る汽車どこへゆく
ラメちゃんたらギッチョンチョンで
パイのパイのパイ
パリコとパナナでフライ フライ フライ

東京で繁華な浅草は
雷門、仲見世、浅草寺
鳩ポッポ、豆売るお婆さん
活動、十二階、花屋敷
すし、おこし、牛、てんぷら
なんだとこん畜生でお巡りさん
スリに乞食にカッパライ
ラメちゃんたらギッチョンチョンで
パイのパイのパイ
パリコとパナナでフライ フライ フライ

東京はよいとこ面白や

豆腐 みそ豆 納豆 桶屋

羅宇屋 飴屋に甘酒屋

七色とんがらし 塩辛屋

クズーイクズーイ 下駄の歯入れ

あんま 鍋焼き チャンしゅうまい

唄の読売ゃどうじゃいな

ラメちゃんたらギッチョンチョンで
パイのパイのパイ
パリコとパナナでフライ フライ フライ


東京の自慢はなんですか
三百万人うようよと
米も作らずにくらすこと
タジレた市長を仰ぐこと
それにみんなが感心に
市長のいうことをよくきいて
豆粕食うこと痩せること
シチョウサンたらケチンボで
パイのパイのパイ
パリコとパナナでフライ フライ フライ


東京の名物 満員電車
いつまで待ってても乗れしねぇ
乗るにゃ喧嘩腰 命がけ
ヤットコサと空いたのが来やがっても
ダメ ダメと 手をふって
またまた止めずに行きやがる
なんだ故障車か ボロ電車め
シチョウサンたらケチンボで
パイのパイのパイ
パリコとパナナでフライ フライ フライ

東京にも 裏には裏がある
鳥も通わぬ 島というが
おてんとさまも 影見せぬ
暗くて臭くて 穴のよな

犬の小屋かと 思ったら
どういたしまして 人間が
住んでおります 生きてます

衛生論も 体面論も
パイのパイのパイ
パリコとパナナでフライ フライ フライ

 

 

 

 

 

・東京節(唄:エノケン)

https://www.youtube.com/watch?v=HecduFXZZQQ

 

・東京節(英訳字幕付き)

https://www.youtube.com/watch?v=NJj8FVsQXwI

 

・東京節(唄:エノケン 当時の映像付き)

https://www.youtube.com/watch?v=WGw80gpkqXE

 

・東京節(唄:東海林太郎)

https://www.youtube.com/watch?v=EmM1eS4dvvg

 

・東京節(歌い手不明 当時の写真付き)

https://www.youtube.com/watch?v=jAMKXoIUqEU

 

・令和東京節(唄:天元ふみ)

https://www.youtube.com/watch?v=xZDfH3P8Cjw&t=1s

 

 




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